神奈川湊の浦島太郎伝説

①神奈川駅
さて、前回の拙著「マイナー・史跡巡り:神奈川台場 ~横浜港の誕生秘話~」では、神奈川駅のあたりの幕末を中心にお話をしました。(写真①

この場所の調査を一通り完了し、帰路ベイブリッジ方面へ向かっている最中のことです。

以下のような交差点の看板を発見しました。(写真②

「浦島町って、あの浦島太郎伝説の?あれ?浦島伝説って岡山じゃなかったっけ?」(私)
「それは桃太郎でしょう?」(おつえ)
「えーっ、じゃあ浦島太郎は神奈川湊だったの?」(私)

ということで、子供のころから慣れ親しみ、最近は、桐谷健太さん演じる「浦島太郎」が、浜辺で歌う歌「海の声」も記憶に新しいところですが、まさかその場所がこことは?(写真③

これは大変とばかりに、史跡巡りの枠外ですが、時代も史実も良く分からない浦島伝説の調査を少々しました(笑)。
②東海道にある浦島町の看板

■浦島太郎伝説
浦島太郎の話については、皆さん良くご存知でしょうから、ここで最初からお話をするのは控えます。

この伝説、日本全国津々浦々にあり、またストーリーも大枠50種類もあるようです。(つまり神奈川湊がオリジナルという根拠は無いということでした。)

竜宮城という海底基地は出てくるし、乙姫様という美人は出てくるし、玉手箱というタイムワープ的な話も出て来ることから、ある意味「かぐや姫」と並んで、日本のSF事始めの感のある名作ですね。

一方で、日本書紀や万葉集にも出て来るこの伝説、かなり古くからあることが原因なのでしょうが、後世色々と突っ込みが入ります。

実はSF事始めではなく、官能小説事始めだとか・・(笑)。
③桐谷健太さんの「浦島太郎」

まあ、確かにタイやヒラメの踊りを見るだけで、時が経つのも忘れるような子供っぽい男も居ないでしょうから、浦島太郎と乙姫の艶っぽいストーリーも沢山展開されています。

ただ、大方の通説になっているのは、他の御伽噺(おとぎばなし)にも良くあることですが、「神隠し」にあった子供や若者への追悼的な話から出来たのだろうと、いうものです。

浦島太郎も、以下のような事実が変形したものなのかもしれません。

ある日「浜に行ってくる!」と言った息子、または旦那が、何時まで経っても帰ってこない。心配して家族や近隣の人と懸命に捜索するも、全くの消息不明。生きているのか死んでいるのかも分からない。唯一最後の目撃証言は、浜で遊んでいた子供たちが「あのお兄さんなら、僕たちからカメを買ったよ。」というものだけでした。
④浦島公園

いかがでしょうか。

特に海辺や漁の最中は、海難事故にあった人も多かったでしょうし、行方不明になる要因は今も昔も変わらず色々あったことでしょう。

昔は、今のように監視カメラ技術がある訳でもないので、原因が分からず仕舞いということが遥かに多く、それらは一言「神隠し」で片付けられてしまうケースが多かったのです。

しかし、当時の行方不明者の家族は、やはり「神隠し」の一言ではなかなか済まされない感情でしょう。

そこで色々と考えられる現象に尾ひれ葉ひれが付いて出来たお話が浦島太郎伝説ではないかと。

そんなことを考えながら、先ほどの交差点から京浜急行の線路側を歩いていると、写真④のような場所に出ました。(写真④

⑤この公園周辺は「亀住町」
最近は、パソコンやスマホ、御習い事etc.・・・で忙しい子供が多く、我が家の近くの公園では、子供が元気に遊びまわっている姿が昔ほど見られないなあと思っていました。

しかし、この公園は寒いというのに、子供が元気に走り回っていました。やはり子供が元気に遊ぶ公園って良いですね!!

と、その時、横の電柱を見ると(写真⑤
なんと、ここは、あの浦島太郎を竜宮城へ連れて行ったカメが住んでいた町!

ということは、千年前くらいにも、この辺りは海岸で、今と同じ様に子供たちが元気に走り回って遊んでいる中に、ここに住んでいたカメを弄り遊ぶ子供らが居たということですね(笑)。(絵⑥

なにやら写真④浦島公園が、当時の海辺の砂浜のように見えてきました。

今でこそ、海岸は東側に1km程も離れていますが、それは近年の埋め立てであり、浦島太郎の話がいつの時代の時の事なのかは分かりませんが、当時はここが砂浜であったとしてもなんら不思議は在りません。

■日常生活とタイムスリップ物語
⑥この公園の辺りで子供がカメを弄っていた?
この物語のミソは、竜宮城で淫蕩生活をしていた太郎が、「これではいけない!」と一念発起して元の浜に戻ると、廻りの様子は全く変わっていて、かつ誰も知った人が居ない。ついつい開けてはいけないと乙姫から貰った玉手箱を開けると、煙がたって白髪のお爺さんになるという場面ですね。

このようなタイムスリップもの、昔から日本人は好きだったのでしょうか。

それも仰々しくSFものにするというよりは、上手く日常生活に溶かし込んでいる話が多いように思います。先のかぐや姫等もそうですし。

一方、同様に近年では、日常生活に溶かし込む、特に恋愛ものにタイムスリップを応用した物語が多いと思いませんか?(絵⑦

⑦最近思いつくタイムスリップ恋愛モノの例
恋愛物語の基本は「すれ違い」にあり、タイムスリップ(タイムリープ等呼び方は様々)は、この「すれ違い」を引き起こすのに丁度良いというのも多用される一つの要因だとは思いますが・・・。

いずれにせよ、浦島太郎等の日本昔ばなしとの共通性は、このような非日常を日常に溶かし込んで面白くするストーリー展開ではないでしょうか?浦島太郎の頃から、このような話の作り方が日本人好みだったのだと思います。

■ウラシマ効果
このタイムスリップものの物語として捉えた場合に、浦島太郎伝説は奥が深いです。

というのは、アインシュタインの相対性理論が発表された後、この玉手箱をあけると御爺さんになってしまう浦島太郎話は、
⑧「ウラシマ効果」の説明

「凄い!既に万葉集や古事記の時代に相対性理論を予測した物語が描かれていた!

とちょっと日本のSF小説界ではセンセーショナルな話となります。
あのドラえもんでも取り上げられています。(絵⑧

ドラえもんのスネ夫の説明の通り、相対性理論では、運動している物体は、静止しているものに比べ時間の流れが遅くなる、この理論を「ウラシマ効果」と日本のSF業界では呼んでいるようです。

もう少し分かりやすく「ウラシマ効果」を描くと絵⑨のようになります。(絵⑨
⑨浦島太郎伝説と相対性理論
ちなみに、この絵の中で書かれている3年と700年については、浦島太郎の50種類ある伝説の中でも、割と有名な話から引用しました。ストーリーの概要は以下の通りです。

【絵⑨の3年、700年の根拠となる浦島太郎ストーリー】
浦島太郎が竜宮城で乙姫と淫蕩生活をしているのが3年、海辺へ戻ってみると700年が経っており、太郎が玉手箱を開けると、太郎本人700歳以上になるのですが、人間のままでは、白髪の御爺さんになっても生きられる歳ではないので、たちまち千年は生きられる鶴に姿を変えるよう玉手箱には仕組んであったのです。
太郎を乗せて来たカメは、実は乙姫が姿を変えたものであり、カメは万年生きられるから、残り300年は、鶴の浦島太郎とカメの乙姫は幸せに暮らしたとさ。めでたし、めでたし。
⑩ワープに入る宇宙戦艦ヤマト

さて「ウラシマ効果」の相対性理論の堅い話に戻ります(笑)。

一応、私も理系の端くれですので、絵⑨の前提で、カメがどれ位の速度で移動していたかを計算しますと29万9千9百97.2km/s、光速の99.9991%ということになりました(笑)。

まあ、光速と同じ移動速度だと時間の経過は0(時よ止まれ!)となるのですから、これくらいの速度が出ていないと700年と3年の間のギャップは埋められないでしょうね。

では、宇宙戦艦ヤマトのワープは??
1年掛けてイスカンダルへ行って帰ってきたら、「ウラシマ効果」で既に人類は滅亡し、ガミラスが占拠し繁栄している数百年後の地球になっていた(笑)。

どんどん非現実的な話へと、それこそ話がワープしてしまいそうです(笑)。(絵⑩

※個人的には、宇宙戦艦ヤマトの作者である松本零士氏は、「ワープ」という「光速を超える」と言う現在の物理学では全く説明の付かない概念を持ち出すことで、これらの不要な議論に蓋をするよう仕組んだのではないかと思っています(笑)。

◆ ◇ ◆ ◇
ところが、最近この「ウラシマ効果」を実測するために、東京大学や理研が光格子時計なるものを開発し、我々の実生活の中での時間の流れの差を測定するというニュースがあちこちに流れていました。(写真⑪
⑪光格子時計の実験室の様子

先の話のような非現実的な話とは違い、こちらは、高さ5㎝の標高差による地球の遠心力の差分による時間差まで測定できる能力があるそうです。

まあ、その測定の結果、高層マンションに住んでいらっしゃる方の方が、戸建てに住む人より若くして居られるなんて結論が出るとも思いませんが・・・、測定結果が何に使われるのでしょうか?楽しみです(笑)。

◆ ◇ ◆ ◇
と、そんな妄想を膨らませつつ、また公園の子供たちが遊んでいる姿に目を移すと、もしかしたら、浦島太郎が居なくなってから、700年は丁度今日かもしれない。この公園に急に浦島太郎が現れる場面を想像し、思わず一人でニヤリとしてしまいました。(写真⑫
⑫カメは虐めませんが今日も浦島公園で遊ぶ子供たち
※つえのあたりに浦島太郎の姿が・・・(笑)



長文最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。